突発性難聴の症例

目次

1 急性中耳炎から発症した難聴、耳鳴り、耳詰まり感

患者

40代女性

症状と来院理由

2週間前に鼻づまりがひどくなり、初めて副鼻腔炎と診断された。診断5日後、鼻の症状に加え、左耳が痛くなり、病院に行ったところ、左耳が急性中耳炎、内耳炎、両鼻副鼻腔炎と診断され、4日間入院し、鼓膜切開した。聴力も低下していたため、突発性難聴の治療として、ステロイドの点滴と内服治療も行った。耳の聞こえづらさは変わらず、詰まり感もある。退院4日後に外来に行ったが、中耳炎の膿はなく回復していたが、聴力はほぼ変わらなかった。ザーという耳鳴り、キーンという耳鳴りの2種類があり、耳の中が腫れているようなギューッとしたつまり感があり、それのせいで聞きづらい気がする。病院の治療で耳の症状に改善があまりみられなかったことと、疲れやすく、倦怠感があり、子育て・家事に支障がでている、頭がぼーっとしていて、復職できるか不安があり、はり治療を試してみようと来院された。

治療内容と経過

初回:耳の症状が出る2、3ヶ月前から今まではなかった頭痛がちょこちょこあった。首肩こりの自覚はないが、最近、体のケアが追いついてない自覚はあった。噛み締める癖がある。立ち仕事に加え、左肩に重い荷物を普段からかけていたりする事が多いというお話でした。首の奥深いところに固さがみられたため、ふくらはぎ、すね、膝周り、肩甲骨近くにはりをしました。施術後、体があたたかくなったと感想がありました。週2回のペースをご提案しました。

2回目:日を追うごとにつまり感が弱まってきた、耳に入っている水の量が減ったような感じがする。全身倦怠感が軽くなり、休み休み行っていた家事が以前のように休まずできるようになった。右の耳の下にまであった違和感も少なくなった。ただ、聞こえについては変わらない。水分代謝を良くする足のツボ、かみしめのためのツボにはりをする。耳の治療は早期治療が改善の鍵を大きく握るため、休職中は毎日通うとされた。

3回目:2回目の午前中の施術後の帰り道、汗ばむほど体があたたかくなった。午後、入院中全く聞こえなかった耳の前で指をこすったら音がした。自分の声が響いていたのが半減し、聞こえづらかったお子さんの声が聞こえた。倦怠感もまた一歩楽になり、気持ちが上向いてきた。動きすぎると耳の症状が強くでていたが、そのようなこともなくなった。あごの緊張、首の前後をやわらかくするために、手首や、ふくらはぎのツボにはりをした。

4回目:聞こえが良い状態になってきた。耳鳴りのない時間も出てきた。ぼーっと詰まっている範囲も減った感じがある。病院で、中耳炎・内耳炎の経過は良く、肉眼でまだ水はあるけど切開までは必要なく、副鼻腔炎の治療は続けることになった。聴力がだいぶ回復していた。

5回目:2〜4回目は毎日施術をしたが、復職したため、4日後の施術となった。仕事復帰で疲れはでたのか、耳の症状にあまり変化はなかった。

6回目:5回目の施術後、耳鳴りが少し強くなったが、次の日から耳鳴りが半減した。耳にある水の感じも楽になってきた。鼻うがいの後に、耳にパチっとした痛みや違和感ある。

7回目:耳鳴りはほぼなくなった。詰まってる感じもほぼない。唾をのむとパチっとしたり、ぼわっという水はまだある。以前は、下のものを拾おうとすると耳に圧を感じたが、今はそれも少なくなった。

8回目:7回目後、病院で聴力を測ったら回復していた。耳の調子は良く、唾を飲んだ時のパチっと感、ぼわっという水もなくなった。下のものを取る時の圧もなくなった。聴力も症状も回復したため、施術を終了とした。

考察

発症から2週間と治療開始が早かった事、治療間隔を2〜4回目は毎日施術をした事が、首肩の血流を良い状態に保ち、耳の症状の回復に最短でつながった症例だと思います。噛み締めによる、あごから耳にかけての緊張をやわらげたこと、水分代謝のツボが首肩こりに作用したことも回復の要因になりました。

2 耳のつまりとボワンボワンする感じの取れない突発性難聴

患者

50代女性

症状と来院理由

3週間前、朝起きたら左耳が詰まっていた。昼に電話をとったら聞こえなかったので、次の日病院に行くと突発性難聴と診断された。

投薬で、耳の聞こえは少しずつ回復してきたが、耳のつまり感が変わらないので来院。

治療内容と経過

昔から鼻炎がある。一か月前から喉に痰が絡む症状もあるとのこと。

初診:首肩こりがあり、喉にも緊張があったため、手のツボを使ってゆるめた。「肩が軽くなった」との感想をいただく。

2診:つまりやボワン感は変わらないが、女性の声が響くのが少しひびかなくなった。聞こえが左右同じ感じになり、痰がからむ回数が減った。

3診:つまり感が来院時が10とすると6に減った。ボワン感も減った。

4診:さらにつまり感が6から5に減り、音が響く感じはなくなった。以前は耳全体がボワーンとしていたが、今は耳の奥で詰まっている感じ

5診:聴力は回復した。鼻水が減り、喉に痰が絡むのも減った。つまりは少しずつ和らいで、日常で気にならなくなってきたが、鼻がつまると耳も強く詰まるため、セルフケアとして手首をあためるよう伝える。

11診:同様の治療を続けると耳の症状はなくなった。のどの症状が半減しているため、喉の治療に集中する。

14診:喉の症状も改善したため、施術を終了とした。

考察

鼻と耳は近く、耳の症状と関係が深い。鼻水も首肩こりと関係している。首肩こりを軽減し、鼻水の症状を改善したことが、耳の症状の早期回復につながった。手首の冷えが鼻水と関係するため、セルフケアを取り入れてもらったことも、改善を大きく後押ししたと考察される。

3 ホットフラッシュで寝不足が続いた突発性難聴

患者

50代女性

症状と来院理由

1か月半前より、ホットフラッシュで夜3,4回目覚めるようになり、「寝てはいるだろうが寝た気がしない」寝不足が続いていた。

1か月前に左耳がパンっと聞こえなくなり、左耳の感音性難聴と診断された。

2週間の投薬で、回復したが、一週間後、聞こえの悪さ、耳のこもった感じ、音が響く、2重に音が聞こえるのがぶり返し、点滴をしても変化がないため来院した。

6年前にも突発性難聴になり、その時は1か月ほどの点滴と投薬で耳の症状は回復したが、めまいのようなふわふわした感じと気持ち悪さはずっと残っている。

治療内容と経過

首肩こりは以前よりあり、疲れてくると、こめかみや後頭部に頭痛がでてくるとのこと。

初診:ホットフラッシュと関係する首肩こり、腹部の緊張があった。手と足のツボを使い、腹部と首肩の緊張を緩めるように施術をした。

2診:前回の施術の次の日より、寝汗が激減し、起きる回数も少し減り、多少寝れている感じがする。

3診:響きがなくなり、聴力は回復した。夜も一回起きるかどうかになり、日中のホットフラッシュの回数も減った。

5診:耳がこもる感じがたまにになり、しばらくすると消えるようになった。通院回数を週2から週1へと変更する。

6診:耳の症状が安定したため、めまいのようなふわふわとした気持ち悪さに対して施術をする。

9診:気持ち悪さはほぼなく、耳の症状も耳鳴りがたまに10秒ぐらいキーンとなるだけとなる。

12診:ふわふわしためまいも、耳の症状もなく、ホットフラッシュも安定してきたため、施術を終了とした。

考察

睡眠不足と突発性難聴は密接にかかわると推測されるため、まずは寝不足の原因となるホットフラッシュの改善を目指した。夜のホットフラッシュが減り、睡眠を良くとれるようになったことが、早期回復の要因になったと思われる。腹部の緊張も強く、めまいとも関係していた。婦人科の足のツボは、肩こりの軽減にもつながる。全体を通して、お腹の緊張がホットフラッシュ、めまい、首肩こりと関係し、耳の不調を招いたと推察される。

4 首から鎖骨にかけて骨なの?と思うぐらい硬く、左肩がつらい突発性難聴

患者

40代女性

症状と来院理由

2か月前に突然、強い耳鳴りが二日ほど続いた。その後、問題なかったが2週間後にまた耳鳴りが始まり、今度は収まらず病院に行くと低音性突発性難聴と診断を受けた。聞こえの悪さ、耳鳴り、耳が詰まっている感じ、音が響く、こもる、2重に聞こえるなどの症状がある。

その後、2週間投薬をするが変わらず、違う病院に行くが症状が変わらないため、来院。

治療内容と経過

若い時から、なで肩であり、姿勢が悪く、左肩がつらい。「首から鎖骨にかけてが骨かと思うほど、硬い」左の首の付け根がさわるとビリっとしびれている部分もある。マッサージに肩こりで行ってもすぐ戻ってしまう。常にヒートテックを着込むほどの冷え性。

初診時 本人の自覚通り、胸鎖乳突筋、首と肩の付け根、あごの緊張があった。きんちょうをゆるめるため、手のツボにはりをしたところ、首肩回りにじわーっと血流が巡ってくる感覚があり、びりっとする部分もやわらいだ。

2診目 前回、施術後耳鳴りは施術前が10としたなら3まで減っていた。首肩こりも楽になる。同様の施術をする。

4診目 響いていた男性の声が大丈夫になり、女性の声が響くようになる。耳鳴りの音も低いボーから、高いキーンに変わる。

5診目 ずっと一定だった耳鳴りがの音の大きさに波がでてくる。

6診目 一人だと耳鳴りが気にならない時がでてきた

7診目 一対一だと声は響かなくなり、人がたくさんいるときだけ共鳴するようになる。

11診目 聴力検査の結果、聴力が回復してきたことと、耳鳴りは日中はほぼ気にならなくなってきたので、通院回数を週2回から、週一回へ変更する。

18診目 響きや耳鳴りが小さくなり、日常生活で気にならない、状態も安定しているとのことなので、施術を終了とした。

考察

首から鎖骨にかけての長年の肩こりと、左あごに強い緊張があった。その緊張により、耳周りの血流が悪くなったと考えられる。今回のケースは手の緊張も強く関わっていた。手のツボを使うことで、長年マッサージをしてもすぐ戻っていた肩こりが戻らなくなり、首肩が楽な状態が続き、耳の症状の改善につながったと推察される。

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